2006年05月14日

戦略情報研究所講演会 青木直人氏のお話を伺っての感想

06.5.12 戦略情報研究所講演会 講師:青木直人氏
「北朝鮮処分にどう備えるのか---全拉致被害者奪還のために--」

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まず青木氏は冒頭にいきなり一言「北朝鮮の金正日体制は崩壊の過程に入っている」と仰りました。
そして講演中「政権中枢は今脳死状態にある」と仰ったのが強く印象に残りました。
今、北朝鮮の体制は政治判断の出来ない状況にあり、金正日は、米中の接近を受けてやがて中国がどういう決断に出るか、そこを非常に警戒している・・・と言うのが講演会の大雑把な要旨です。

金正日体制の崩壊の可能性は、私も素人ながら漠然と考えていた所でした。
ですから青木氏の言葉を聞いて、「ああやっぱり?」と思ったのがまずは私の率直な思い。
と同時に、これから起こるであろう様々動きに惑わされる事なく、このチャンスを生かして被害者救出と言う宿願を果たせるのか否か?という一抹の不安も感じました。

お話を聞いていて個人的に思ったのは、金正日の指示による日本への武力行使やテロの可能性は限りなく低くなったのではなかろうか?と言う点です。
今金正日の頭の中は、アメリカからの圧力を受けた中国が、北朝鮮の扱いについて今後どういう決断をしてくるのか?と言うそのことへの警戒感しか無い、と言う。
となれば、日本へ武力行使をする事はもちろんテロを仕掛けるなどという小細工を考える余裕すら、今の金正日には無いんじゃないでしょうかね?
例えば今、原発なり新幹線なりがテロ攻撃にあえば、日本人の誰もがまず一番に北朝鮮の仕業では無いか?と疑うでしょう。
それが今の日本の世論の素直な状況では無いでしょうか?
金正日が下手に日本にテロなど仕掛ければ、日本の対北朝鮮への感情は限りなく悪化するだけで、体制の延命を図りたい金正日の思惑とはかけ離れてしまうだけ。
つまり、日本が制裁をかけても、北がテロを含む武力行使に打って出る可能性は限りなく低くなったと思っても差し支えはないのでは?と言うのが、私の考えなのですが。
どうでしょうか?

>韓国による統一の可能性は非常に少なく、北朝鮮内部で人民が蜂起が起きる可能性も非常に少ない。
>中国による傀儡政権の樹立の可能性は高い。

つまり体制崩壊と聞いた時、一般的に私たちがイメージする「民主的な政権」が北朝鮮に樹立する可能性は少ないということ・・・だそうです。
中国は人民解放軍が大量の血を流して確保した北朝鮮と言う緩衝地帯を手放すつもりは無い。
といって米中が半島で血を流してまで争う事も無い。
あくまでも話し合いで妥協を図るならば、アメリカ側も一定度中国の国益を考えなければならない。
傀儡政権であっても核やミサイルの問題にケリがつき、北朝鮮に○小平(トウ・ショウヘイ)型の体制が出来るのであれば、西側諸国もそれを承認することになる。
そうなれば中国の国益もある程度重視した、中国による傀儡政権の樹立の可能性が一番高い・・・と言うお話でした。

・・・う〜ん、やっぱり傀儡政権の樹立ですかね?
私もそういう展開が一番可能性が高いのではないか?と思います。
建前では南北統一を口にする韓国が本音ではそれを望んでいない事はすでに周知の事ですし、あそこまでガチガチに相互監視の網がかけられ恐怖政治に縛られている北の体制では、人民の蜂起の可能性は無きに等しい。
米中の経済面での依存度がお互いにあそこまで強くなれば、それを壊すリスクを背負ってまで米中が決定的に対立し一戦交える可能性は限りなく低い、というのは私レベルの人間でも分かる事。

と言って核のゲームを止めようとしない金正日を中国は持て余しているでしょうしね。
偽ドルの問題他、拉致や麻薬などの懸案を抱えた北朝鮮をそのまま擁護する事も、世界の趨勢が許しませんから。
そういうアメリカを含む国際世論を敵に回してまで、北朝鮮の金正日を中国がかばい通すとは、私にも思えない。
そこを見越して、アメリカは中国に対し金融攻撃に加えて人権攻撃を中国に加え、アメリカとの協調路線を選ぶのか?それとも北と心中する道を選ぶのか?踏み絵を迫っている、と言う。
金融制裁に加えて次は人権攻撃を中国に加えるという、アメリカは今非常に良い所を突いて中国に圧力をかけていると言えるんだそうです。
そして、中国は北と心中する道は決して選ばないとも言う。
アメリカと中国は、そろそろ本気で金正日の処遇について考え始めるであろう、という説明も、これまた十分に納得の行く物であると思います。
となれば、金正日を排除した上での中国主導による傀儡政権の樹立と言うのはありえるというのも、十分納得の出来る意見であると思う。

>拉致問題の解決は、確実にチャンスはやってくる。
>だが、同時にピンチもやってくる。

・・・この言葉が一番重く心に響きますね。
チャンスが来るのはいいがピンチも同時に来てしまうのは、やはりありがたくは無いこと。
ピンチとは当然、傀儡政権樹立の過程で核やミサイルの問題にケリがついたとき、日本国内から、「拉致棚上げの国交正常化」の声が出てくるようになる、と言うことです。
政府認定の被害者の帰国などをもって取り合えず拉致問題は解決とし、特定失踪者の問題などは正常化の後ゆっくりやればいいではないか?と言った「拉致問題の棚上げ」的な論調が必ず出て来るようになる、と言うこと。

そういう状況を踏まえて、では日本は今後どういう策を持って拉致問題の解決を図るのか?と言う点が大事になってくるのだと思います。
日本国内にも北朝鮮あるいは中国にばかり甘い顔をしたがる敵はたくさんいるのです。
隙あらばこの問題を棚上げしようと企む連中を抑えて、いかに「拉致被害者全員救出」の声を高めるか?

私は常々、拉致被害者を一人残らず救うためには、どんな揺さぶりがあっても最後まで粘れる世論が必要と考えてきました。
制裁発動に反対であろうがなかろうが小泉さんを支持しようがしまいが、そんなところとは関係なく、米中両国はそれぞれの国益を睨んで動いていきます。
今後拉致問題を巡る動きがどんな展開になろうとも、この運動の主目的「全ての被害者を救う」を見失わずに、親北・媚中派の連中の策略に負けないで最後まで「全員救出」を主張すること。
そこが何よりも大事な原点では無いか?と思うのです。
ゆえに、私は最低限、「被害者の全員救出」という主張の出来る人はすべて、仲間であり同志であると思っているのですが。

ともかくも実際問題一番肝心なのは、ではどうやって日本国民の意思「被害者の全員救出」を強く国内外にアピールするのか?という点だと思います。
私はここでやはり制裁の発動という手に打って出るべきではないかと思います。
それも例えばただ何となく万景峰号を止めるだけでは意味が無い。
当たり前の話ですが「全ての被害者が帰らない限り、日本は北朝鮮に対し、いかなる援助もしない」と公式にアピールした上で、万景峰号を止めるべきでしょう。

そして万が一ですね。
制裁の発動が難しい状況にあったとしても、最低限、この公式アピールは勝ち取らねばならないと考えています。
その場合、例えば制裁発動に慎重・反対の立場ではあっても、少なくとも公式アピールをするという点についてはおそらく意見の差異は無いものと私は思うのです。
日本政府が毅然たる態度を公式に示しただけでもそれは圧力になりうる事です。
第一、日本の意思を中国や北朝鮮にはっきり示す事にもなります。
そこを最低限の共通の理解事項とした上で、更にその上の制裁発動という手順に持っていくために丁寧な説明と理解を求める行動が何よりも重要となるのではないかと考えます。
従って、現時点では例え制裁慎重派であっても反対派であっても、「全ての被害者を救う」と言う目的さえしっかりと持っているのであれば、彼らは拉致問題の解決を願う仲間であり決して戦うべき敵ではないと私は思う。

米中韓露の周辺各国は、北朝鮮の体制崩壊後を睨んで虎視眈々と動いています。
狙いは当然、日朝正常化後に日本から出る援助、お金です。
それを逆手にとって考えれば、お金を握っている日本は交渉のための最強のカードを持っている、と言えると思います。
資金がなければ、体制崩壊後の北朝鮮に対し各国がどんな思惑を抱いていても、それは絵に描いた餅でしかありません。
そこを交渉のカードとして上手く使えるかどうかが拉致被害者救出の鍵になるわけでありますが、そこの所戦略を持って事に当たる人が政府の中にいるのかいないのか?
ここがどうしても大きな問題になってくるのだろうと思います。
そういうことも考えると、やはり秋の総裁選では福田氏ではなく安倍氏にその座に就いてもらわねば、近く来るであろう拉致問題解決のための千載一遇のチャンスを逃しかねないのではないか?と私は思いました。

青木氏も講演の中で指摘をしていらっしゃいましたが、

>対中国のODAも、ただばら撒いて終わるのではなく、もっと日本の意思を絡めて外交カードとして使うべき。

というご意見はいちいちもっともな意見だと私も思います。
日本はどうしても中国に対しては毅然と物を言えない傾向がある。
毅然たる態度もなしに、拉致問題の解決はまず有り得ないと言うのは、すでに多くの国民が理解している事ではないかと思うのです。
中国に対しても北朝鮮に対しても言うべき事は毅然と言う。
相手にこちらのいう事を聞かせるためには、時には圧力も使う。
ただお人好し度丸出しで低姿勢にお願いしているだけで、向こうがこちらの思惑通り動くはずも無い事は、私たちは9・17以降の日朝あるいは日中の外交のあり方を見て嫌と言うほど学んできました。
後はそれを行動に移す決断を、政府が出来るか否か?と言うのが問題なのですが。

最後にもう一つ印象に残った話を。

>先日ブッシュ大統領が横田早紀江さんと面会したのは、小泉総理の第3次訪朝を潰す狙いもあったとのこと。

小泉さんを潰した、というよりも小泉さんを担いで日朝正常化を狙う連中の思惑を潰した、と捉えるべきなんでしょうか?
人権をキーワードにし、北朝鮮に中国にそして韓国に圧力をかけているブッシュ大統領を差し置いて、小泉さんがのこのこと国交正常化のために訪朝する事は有り得ない、と私も思います。
めぐみさんをはじめとする拉致被害者の問題を差し置いたままの日朝国交正常化を許すほど、日本の世論もアホでは無いと思いますし。
親北・媚中派の思惑を、早紀江さんの「娘を思う切なる母の思い」が蹴散らした今こそ、拉致問題解決のために良い追い風が吹いている今だからこそ、より一層世論に対しこの問題への深い理解と広い支持を求めて、支援の輪を広げるべく出来る事を地道に積み上げる必要があると考えています。
被害者を救うために政府の思い腰を動かせるかどうか?は、これ全て世論の力にかかっていると言っても過言では無い、と私は思っていますので。


青木氏の講演会を聞いての私の主な感想はだいたいこんな所です。
この講演会の中身は基本的に青木氏の著書「拉致処分」を踏襲したものですので、まだ未読の方はぜひ、この機会に読まれる事を強くお勧めいたします。

尚、青木氏の講演は徹頭徹尾非常に熱のこもった物で、その迫力は聞いているこちらが蹴倒されそうなくらいの勢いがありました。
戦略研の常連参加者の方に聞くと、青木氏がこんなに熱く語るのを初めて見たとか。
それくらい拉致問題の山が動く気配が現実にそこまで来ている、と言うことの手応えを青木氏自身が感じている、と言うことでしょうか?

この講演会の模様はぜひご訪問の皆様にも詳しくお知らせしたい所ですが、主催者側より講演内容の全文紹介はご配慮いただきたいとのお願いがありましたので、この講演会のテキスト化は見送らせて頂きます。
以後、情報研での講演会も同様の扱いと致しますので、予めご了承下さいますようお願いいたします。<(_ _)>


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