06.11.16 友愛会館にて
『西岡力 救う会副会長の講演 その2』

圧力をかける事についてで、我々は前から国際連帯という事をずっとやってきましたので、国際社会で実質的に強制力を持っているのは国連の安保理事会だけですから、それ以外の組織は国際世論を盛り上げると言う点では価値がありますけども、強制力は無いわけです。
しかしいよいよ安保理事会で北朝鮮問題が取り上げられるようになったわけです。
私はこういうときが来ると前から言っていたわけです。
そのときはむしろをひいてニューヨークで座り込みをしようと前から言っていたんですけど、それをしなくても常任理事国の大使が皆会ってくれましたからちょっと私の読みが外れたんですが。
拉致を安保理事会が入れないで、核問題だけで議論するんだったら座り込みをしなくちゃいけないと思っていたんですが、しかしこれは日本の外務省も全力を尽くして、前々から実は2年位前からこうなったときはこうして欲しいと。
安保理事会で北朝鮮の制裁決議が出たときに拉致という言葉が入らないと拉致問題が棚上げになりかねないと、いう事をずっと言い続けていたんですね。
イラクに対する安保理決議の1441号決議には、これはイラクは大量破壊兵器を持っている疑いが強いと。
だから軍事制裁も含める方法で大量破壊兵器をイラクから取り上げなくちゃいけないとあるわけです。
これが戦争の根拠になったんですが、その戦争の根拠になった安保理理事会の決議の中にイラクがクウェート人を拉致していまだに帰さないという事が書いてあるわけです。
クウェート政府がイラクの大量破壊兵器のところで、自分のところの拉致の事も書いてくれといって外交力で入れさせたと。
クウェートが出来た事を日本が出来るかどうかだと、いう事を言っていたわけなんですけど、日本政府は頑張りまして今回の北朝鮮に対する制裁決議の前文に、理由を書く前の前文のところにですね。
人道上の懸念、humanitarian consequences(※1)と言うんですが、複数形なんですね。
拉致だけじゃなくて北朝鮮内部の人権上の問題も含んで、国際社会の人道上の懸念も含んで北朝鮮の政府は誠実に対応すると言う文が入ったわけです。
※1 humanitarian=人道主義の、博愛の consequence=結果、成りゆき、影響、(論理的な)帰結、重大さ、主要性
もともとの原案では「拉致問題を含む人道上の懸念に対して」と拉致問題と言うふうに特定された文章を日本は作ったんです。
ところが中国が反対した。
今回国連へ行って分かったんですが、中国が反対して「拉致問題を含む」と言う箇所をカットさせた。
本当は「人道上の懸念」と言うところを全部カットしようとしたんだけど、そこは日本が頑張って「そこは折り合えない」と。
アメリカやイギリスやフランスもそれについては日本に賛成した。
それで核問題で北朝鮮に対して制裁する事が目的で、中国が拒否権を使うわけですよね?
中国が反対する事はなるべく入れたくないわけですけど、「人道上の懸念」という言葉は残った。
このタイミングでニューヨークへ行ったという事はつまり北朝鮮は核を簡単には放棄しないと。
6者協議に戻るという事が我々ニューヨークに行ったときに出ましたけど、核を持った核保有国の資格を持って6者協議に出てくると今は言っているわけですね。
国際社会は北朝鮮から核兵器を取り上げると言っているんです。
そこは基本的な矛盾は解消されていませんから近くまた安保理事会で、北朝鮮の核問題でより厳しい制裁決議案の議論がされるだろうと。
イラクの場合も何回もされているわけです。
この次には「人道上の懸念」と言う抽象的な言葉ではなくて、「外国人を拉致して帰さないことも許されない」と、いう事を書いて欲しい。
それを書き入れる事が出来ればですね。
北朝鮮が国際社会の圧力で本当に苦しくなって、まだもう少しかかると思いますよ?
本当に苦しくなったらば、苦しくなったときに本当の交渉が始まるわけですね。
ごまかしではない本当の交渉が始まるわけですが、あるいは金正日政権が倒れて次の政権かもしれません。
でも交渉の始まったときに国連の制裁を解除して欲しいと北は要求するわけですね。
その代わり何をするのか?
核を全部出しますと、原子炉を凍結しますと、じゃあ良かったという事になるかどうか?ですね。
でも安保理事会の制裁決議に拉致という事が書いてある。
書いてあればですね。
その理由が解除されない限り、制裁を解除出来ないんです。
安保理事会で決めた事ですから。
日本はミサイル発射のときと核実験のときに単独制裁をしています。
国際制裁より先にしましたけども、その時に明確に日本のこの万景峰号を止めたりすべての船舶を止めたりしている制裁の理由の一つは、北朝鮮が拉致問題で誠実な対応を取っていないことだと。
当時官房長官だった安倍さんが話したり、核のときは政府が出した文書に書き込んだんです。
従って、6ヶ月経ったらまた見直すことになっていますが、見直すときに核問題で何らかの進展があったとしても拉致問題が何も動いてなければ日本は制裁を解除しないんです。
国際社会の制裁をその水準まで持っていく、という事が我々の今回の訪米の目的だったわけです。
で、その為には安全保障理事会だと。
安全保障理事会の常任理事国が力を持ってますから、拒否権を持っているので、5つの常任理事国に「会ってくれ」と言ったわけです。
そしたら中国は、4つは会ってくれた。
(アメリカの)ボルトン大使は「自分のところは良く分かっているから、他の4つの常任理事国のところへ行ってくれ」と。
で、「北朝鮮が話せば分かるような常識の通じる国では無い事を説明しておいてくれ」と言われたんですね。
イギリスやフランスも拉致問題良く分かっていて、イギリスの次席大使は女性だったですけど、日本語の研修を受けたことのある人で、「私は拉致被害者の現場に行きました」と言ってましたね。
めぐみさん(の拉致現場)、新潟へ行ったんじゃないか?と言う印象だったですね。
大変関心を持っていましたし、フランスは「世界で一番人権問題を捉えているのはフランスだ」と言っているんです。
我々に30分くらい、フランスではいかに北朝鮮の人権問題をやっているか?とブリーフィングしてくれたんですね。
先に言うよりも。
「フランスはEUの他の国は北朝鮮と国交を持っているけど、人権状況が酷いので国交を持たないんだ」と。
「今もその決定を後悔していない」と。
そう言っていました。
ロシアはですね。
ロシア代表部に我々を入れないでですね。
国連本部の中のラウンジで30分会うことになったんですけど、10分くらい遅れて来てですね。
それで5分くらい早く「ちょっと次の会議があるから」と言って席を立っちゃって。
だから「重大な問題で同情します」と言う話は、で「本国に伝えます」と。
「拉致被害者の家族には心から同情します」と、「頂いた情報はすべて政府に伝える」と、「すべての事件が解決されるように祈っています」と言ってすぐ立っちゃったんですけど。
で、中国は会わなかった。
そしてそれに対してもう一つ国連に対して訴える事は、中国はこういうんですけど、「拉致問題は日朝二国間の問題だ」と。
「これを国際的な核問題と一緒にするな」と「拉致問題は日朝二国で解決して欲しい」と言うんですけども、そうではないと。
中国人を含んだ世界中の12ヶ国から拉致が起きているんだという事を、国際社会にアピールしようと。
特にフランス人の拉致についてフランスは安全保障理事会の常任理事国でもありますから、強くアピールしたいと思ってフランスを含む12ヶ国のうち、日本と、韓国はもう被害者家族が運動していますから、韓国人が拉致されていますと我々が通報することもないので、日本と韓国を除く10ヶ国の代表部を訪問しようとしたら、そのうち中国は拒否したので9ヶ国と会えたんです。
被害国の中でも中国だけは会わない。
でもそれ以外のところでは話が進んでいまして、特にレバノンに対してですね。
レバノンの被害者は78年に拉致されて79年に全員帰って来ているんですね。
ところが(4人の被害者のうち一人だけ)妊娠していたので、ハイダールさん(の娘のシハームさん)が(北朝鮮に)戻ったんですけど、これはレバノンの1979年の新聞なんです。
アラビア語なんですけど、この新聞によるとレバノン政府は帰って来た4人を調査したと。
そうしたらばその4人はですね。
「自分たちは北朝鮮である施設に入れられてスパイの訓練を受けた」と、「そこには28人の若い女性がいた」と。
「その中にはフランス人3人、イタリア人3人、オランダ人2人、その他中東や西ヨーロッパから来た女性が含まれていた」
言っていると、この新聞に書いてあるわけです。
レバノン政府は調査しているんだから調書があるはずだと。
そのレバノン政府の公式の調書自体を公開して欲しいと。
レバノン代表部に言ってレバノン政府に要請したら、「重大なことだ、本国に伝える」と。
そして「日本の外務省からもレバノン政府にそういう要請があればとより良いと思う」と言ったので、国連から帰ってきまして日本の外務省に「それをやって欲しい」と言ったら「やります」と言いましたので。
レバノンが今内戦があったりして結構大変ですから古い記録が残っているかどうかちょっと心配ですが、レバノンの公安当局はその記録を持っているわけです。
それがオランダとかフランスとかイタリア政府がレバノンに、我々が「これがこの新聞です」と、「これに書いてあるんだからレバノン政府に聞いてみてください」と言ったので、オランダ政府は特に「すぐにレバノンに聞きに行きます」と言っていました。
国際問題になればつまり日本人だけの問題じゃないという事が明らかになる。
それを一歩進めてですね。
12月13日には、先ほど平田事務局長がご紹介しましたが、これは集会じゃなくて国際会議をやると。
狭いところで関係者だけとあとマスコミが入ってもらってですね。
拉致の被害者は世界中にいると。
特にその目玉はですね。
そのときまでにレバノン政府の情報が出ていれば一番良いんですが、崔銀姫さんに日本に来てもらいます。
マカオの孔(令イン=貝二つの下に言 Hong Leng-ieng)さんの事を見た。
見たというか、一年間隣の招待所で暮らしていて親しく話していた崔銀姫さん。
そしてフランス人拉致について詳しい情報を聞いている。
ヨルダン人にも会っている。
マレーシア人拉致についても話を聞いている崔銀姫さん。
日本人の拉致被害者の人からですね。
主婦の友と言う雑誌を貸してもらって編み物をしたっていっているんですね、崔銀姫さん。
蓮池さんたちもその主婦の友を見ていますから、同じあれじゃないかな?と思いますけどね。
その崔銀姫さんに来てもらって、それとアメリカの北朝鮮人権特使の人に、今何とか来てくれと言って接触している最中ですが。
それから先ほど国連も北朝鮮人権で国連が任命した北朝鮮人権報告官というのがいるんです。
毎年北朝鮮の人権状況を報告する人ですがタイ人なんですね。
ウンテッドさんというタイ人の大学教授も、その時来てくれる事になった。
あと日本でフランスの大使館の外交官とかレバノンの外交官とか、そういう人・関係者を呼んで、そこで崔銀姫さんの証言をきちっと聞いてもらう、いう事をやろうと思っています。
で、国際的な圧力を強めるという事ですね。
そして最後に安全を図るために何をするか?という事ですが、政府の対応方針には入ったんですが、そして全閣僚が入っている対策本部も出来たんですけど、しかしまだ安全を図ることについて政府が表立ってやっていることは無いです。
北朝鮮に対して協議をするとか引渡しを、あと警察が捜査をするとかいうことしか。
今何をしているか?と言う表があるんですが、各省庁にですね。
安全のことについては、まだ具体的なことは進んでいないわけです。
その一環として実は総務省の命令放送があったわけです。
NHKに対して命令放送をという、法に基づいてNHKの国際放送で拉致問題をよりたくさん取り上げて欲しいという事を命令したわけですね。
これは法律に基づいたことですから、出来るわけです。
で、安全を確保するという事を決めたわけですね。
じゃあ、安全を確保するために何が出来るか?と言ったらば、つまり本人たちと連絡を取って「気を落とすな」と「絶対に救いに行くから頑張ってください」という事を伝えることですよね?
ベトナムのアメリカ軍の捕虜がですね。
何人も捕まっていたわけですけども、アメリカはビラをたくさん撒いてラジオ放送もやってですね。
そのビラを見る事が出来た捕虜の人たちは自殺をしようと思ったけど踏みとどまった。
何かですね、水牢みたいなところに入れられてですね。
ここまでこうなって(首のところに手をかざして水牢の水の量を表現)、眠るとバサッとなって溺れて死んじゃうと言うところに漬けられていたりとかそういう事があったんですね。
アメリカ兵がですね。
そんなところへ、アメリカは絶対に忘れていなくて救おうとしていると。
自分と言う存在は忘れられていないんだと思えると人間は頑張れる。
だから、あらゆる方法を使って中にいる人たちに「頑張れ!」と「もう少しで助けに行くから」という事が伝えられるかどうかと言うのは健康が維持出来るかどうか?
精神的なものも含めてですね。
頑張れるかどうか?に関わってくるわけです。
で、実際にNHKの朝鮮語の国際放送は北朝鮮の中で聴かれているわけです。
届いているわけです。
もうひとつ、ここで来てもらって話をしましたよね?
自由北朝鮮放送と言う脱北者の人たちがやっている放送局があって、そこに私が1週間に10分枠を持って、毎回朝鮮語で北朝鮮の幹部たちに対して「今生きている被害者に危害を加えたら絶対に許さないと、「日本国はその責任者を草の根分けても捜し出して、絶対に裁判にかける」と、「これは時効は無い」
「しかし守ってくれたり、救出に役立つ情報を出してくれたりした人は日本国が褒賞する」と、いう事を何回も言っているわけですね。
いろんなルートでそういう話を北朝鮮の幹部の人たちに伝える必要があるんです。
金正日政権の内部はかなり矛盾が高まって来ていますけど、国際社会は先制的な軍事攻撃をしないで金正日から核を取り上げようとしているんですね。
あるいは金正日ごと核を取り上げるのかもしれない。
金正日からじゃなくて、北朝鮮から核を取り上げようとしている。
彼が離さないんだったら彼ごと取ってしまう。(小さな笑い声)
それを先制軍事攻撃以外の方法でやろうとしているわけです。
内部矛盾を高めると言う方法で一定程度それは成功していますけど、まだ金正日政権は核を離していないという点では完全な成功はしていないわけです。
これから何が起こるか分からないわけですけれども、そういう中で何か大きな変動が起きたときに、北朝鮮の外務省とそれから3号庁舎と呼ばれる工作機関は、日本が拉致問題を重視しているという事は知っていると思います。
しかし一般の軍の幹部たちや政治警察の幹部たちは多分知らないと思います、まだ。
金正日はある程度分かっていると思いますけど皆縦割りですから、自分の管轄以外の事は知らないわけです。
知ろうとしてもいけないんです。
しかし、何か政治的な変動が起きて次の政権を担うとすれば、当面は武力を持っている軍か政治警察の中から誰かが出てくる可能性が高いわけです。
そういう日本担当では無い人たちの中の幹部にも、日本と言う国は拉致問題となると狂ったようになってしつこくてたまらないと。
国連に行っても拉致の事となるととにかく反論をしてきかないと。
で、拉致被害者は何人いるんだ?と。
50人とか100人と?と。
「100人を返せば日本から金が来るならば安全に管理しておけ」というふうになるのか?
その事はいろんなクーデターですとかいろんな事があるんです。
いろんなことの中で優先順位を、日本人を守るという事を上にしなくちゃいけない。
それが出来るかどうかは、内部に外からどれくらい情報を入れるか?にかかっている。
アメリカも「ボイス・オブ・アメリカ」というのと「自由アジア放送」というアメリカ系のラジオ放送局があってやってるわけです。
それ以外にもアメリカ政府は北朝鮮人権法を使って、韓国国内で脱北者がやっている自由北朝鮮放送にアメリカの公的資金の援助が入りました。
今年から入るんです。
日本は何をするのか?という事になるわけです。
荒木さんのところが少ない自分たちのお金で「しおかぜ」と言うラジオ放送をやっていると。
そして脱北者の人がお金もないのに始めた物を、日本の人たちが皆さんにもカンパしていただいて自由北朝鮮放送支援委員会と言うのを作って、私はほぼ月に一回くらい韓国へ行って録音をしているわけです。
いろんな所でやった方が良いわけです。
誰がどんなところで聴いているか分からないんですから、出来る限りの事をやるべきだと。
その場合にNHKの国際放送は北朝鮮に電波が届いているんですから、ニュースの編成を何とかしろとなんて話ではなくて、地震のときに電波が届くのであれば被災地に必要な情報を出すという事を公共放送だったら考えるわけですね?
それと同じ事を、じゃあNHKは今やっているのかどうか?
国際放送にもっと考えて欲しいという事なんです。
私は国際放送が具体的に何をしているのか知らないので、断定的なことはいえませんし。
もしもやっているんなら北朝鮮に余り知らせる必要は無いですから、妨害電波が出たりしますからね。
しかし具体的な安全を図るという観点からの番組があるとは承知していませんので、是非そういう事をして欲しいと。
それは政府の政策に入ったわけですから。
いろんな形で北朝鮮の内部にこちらから情報を入れて被害者を絶対に守らなくちゃいけない。
そういう事をやりながら内部から情報を取ってどこに何人いるか?という事を調べなくちゃいけない。
一方国際社会に対しては核問題で金正日に圧力をかけるときに拉致問題も理由の一つにして、一緒に圧力をかけると言う包囲網を作っておくと。
・・・その3に続く・・・