07.5.25 UIゼンセン会館2階会議室にて
テーマ 拉致問題解決に何が必要か、何が足りないのか
-----基本的枠組みの提言-----
『真鍋貞樹 特定失踪者問題調査会専務理事の講演 その1』
〜〜拉致問題解決への立法・行政組織の限界とその克服〜〜

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私の方から申し上げることは、今、荒木が言いましたとおり、日本政府の持っている基本姿勢がですね、外国に頼む、そして北朝鮮に対しては、交渉するという範疇を越えていない点についてどう、我々が考えるかという事だと思うんです。
お手元に、「拉致問題解決の立法行政組織の限界とその克服」と言う形で、資料をお配りしていますので、その課題についてですね、私なりの考え方をお話しさせていただきたいと思います。
最初に結論的な事を申し上げますと、明らかに日本の立法・行政には、この難しい困難な拉致問題を解決するためには、明らかな限界性をもっています。限界があるからこそ、帰ってきていないんですね。
この限界を超えていくためにはどうするべきか?すなわち、問題解決に不可欠なものは一体何だろうということをまず考えて、不可欠なるものを、出来ないままにしておくのか、やらないままにしておくのか?それでは、全くの解決は出来ない。
従って、この今できていない、やらなければいけないけど、やっていない拉致問題の解決に不可欠なものを我々は考えて、新たなものを作っていくような・・
荒木の方から申し上げましたが、この拉致問題の根本的な解決は、金正日独裁政権が変換しない限り全ての拉致被害者を救出することは不可能であると言うことだと思います。
「部分的な解決」、「部分的な救出」というのは、当然あり得るし、あったんですね。5人の拉致被害者は帰ってきたようなことがありますが。
しかし、我々が知らない拉致被害者、誰も知らない拉致被害者をどう救出するのかと言うことに考えが及べば、現在の、金正日独裁政権が継続する限り、この期待を満足する・・ないと思っております。すなわち、拉致問題は、金正日政権が転換しない限り全面的な解決はないと言うことだと思うんです。
このことは、おそらく日本の国民は意識のレベルではですね、みんな「そうだな」と思っているんだと思うんです。ある程度合意はされていると思うんですけれども。
意識の上では、合意があったとしても、それをどう政策レベル、戦略レベルまでいくんだ、また政府が何をすべきなのかということを求めていくときに、これはなくなっていくと言うことなんですね。
拉致被害者が可哀想だから、拉致被害者のご家族があまりにも気の毒だから、可哀想だから政府、何とかしてくださいというレベルから、問題、出て行かない、残念ながら。そう思います。そう言いう構造が出来ているわけです。
一方では、金正日独裁体制の転換がなければ拉致問題は解決しないと思いつつも、実際の行動になると、それを言わない、言えない、あえて、避ける というようなことがあるんではないかと言うふうに思っております。
意識のレベルでのはおおかた、この金正日独裁政権の転換が必要だという合意があったとしても、それが、政策、戦略になっていかないということですね。
これは日本のみならず、世界の国ももしかしたら同じではないかと思っています。
北朝鮮問題で当事国は、六カ国協議ということで、北朝鮮を除く五カ国ですが、その五カ国の中で、明確に、核兵器も含めて、拉致も含めて、強制収容所問題も含めて、脱北問題を含めて、あらゆる北朝鮮における犯罪行為の解決のためには、金正日独裁体制を変換させねばならないというふうに明言した国は、かつて、アメリカしかないんですね。
アメリカで、北朝鮮人権法ができてきたプロセスという中には、明らかに、北朝鮮の「レジュームチェンジ」、「レジュームトランスフォーメーション」ということばが使われてあの法律が出来てきたんです。しかし、残念ながら、今アメリカの議会の中で、アメリカのブッシュ政権の中で、北朝鮮対策・政策の中で、「レジュームチェンジ」という言葉は、完全に消えています。
それは何故かというと、それは、想像すると、中国の関係、ロシアは・・、韓国は太陽政策とおうような状況が続いている限り、アメリカとしても、当事国、関係国がそう言う状況であったならば、アメリカだけが、「レジュームチェンジ」「レジュームトランスフォーメーション」と言うような形というような形で行くというようなことに対して、「どうなんだ」ということが生まれてきたのと言うことに他ならないのではないかと・・ではないかと・・
国連のレベルでは、もっともっとこういう意識というのはない。
国連で、北朝鮮の人権問題について非難決議はするけれども、その根源は、北朝鮮の金正日独裁政権にあって、それを直さない限り、北朝鮮の人権問題は解決しないんだというよなメッセージ、国連のレベルで一回も出てきたことはない。もし、そういった事をご存じだったらちょっと教えていただきたい。私の知る限り、そういったメッセージなり、メッセージを出したとしても、具体的にどうするのかという戦略、戦術が議論がされた記憶はない。
そう言う状況の下ですから、国際的にも、国内的にも、そう言う状況なので、じゃぁ、何も出来ないのかと言うことになっていくわけですけれども、最初にお話ししたように、いや、これはやらなければいけないんですね、解決しなければいけないんですね。じゃぁ、何を考えなければいけないのかということになります。
2番目に改めて「日本の立法・行政の限界性」について、おさらいをしてみたいと思います。
日本の国会で北朝鮮の金正日政権の転換を前提にした戦略というものを議論された経過というのはがあるでしょうか?また国会レベルで、そう言う政策をつくろうとした経過があるでしょうか?
「拉致被害者支援法」というのがありますし、「北朝鮮人権法」というのもありますし、あるいは「経済制裁関連法」がありますけれど、その政策というものは、それらをやらなくてはならなくなった根本的原因である“金正日独裁政権を転換させる”というような戦略ベースから生まれてきたものではないですね。
立法レベルではですね、そうした体制転換を前提とした議論そのものも発想そのものもない。
それは北朝鮮に限らず戦後の日本の国会の議論を改めて考えてみますと、トータリー体力が非常に非常に強かった頃の議論を見てみますと、日本が自ら東側、中共産側に対してどうこれを体制を転換させるなんていう議論なんてありゃせんのですね。
ベトナムをどうするとか、二つの中国をどうするのかとか、二つの朝鮮をどうするのかと言ったような、いわゆる西側の一員として、そういった共産国の体制を、どういうふうに我々日本が、インセンティブを与えて、民主的な国にしていくか、体制転換をしていくかとかいう議論はおそらくなかたっと思うんです。ありますか?(笑い)そういう状況です。
立法レベルでそうなんですから、行政レベルでそんなこと考えるはずがないわけです。
行政レベルで、法制度上、北朝鮮を体制転換させなければならない、法律を作らなければならないというのは想定外です。想定外です。
そんなことを、世界中で考えられる組織というのは、考えられるのはCIAとか、イギリスの諜報機関とかそう言う話になるのでしょうけれども、少なくとも彼等は考えているんです。思考するわけです。実行するかしないのかは、その時その時の政治家の決断、と言うことになるわけですけれども、世界情勢に依存するわけですけれども。少なくとも、そういった発想とか研究というものは、当然のごとくするわけです。
しかし、日本の情報機関での伝統的な問題というのは、立法措置がそう言う状況ですから、行政レベルでそういった体制転換の戦略なんてしないわけですね。
で、日本の情報機関の伝統的な問題というのは、ここ(配付資料)にでていますけれど、バカではけしてなくて、優秀な人たちが集まっているわけですから、ここに書いてあるように、知識= knowledge(ナレッジ)というものは、どんどんどんどんいろんな情報を集めて、知識だけはどんどん集めています。
けしてバカでないからいろんな世界情勢を集めています。
警察庁の公安部の外事課なんていうのは、世界中のそういう公安情報を集めて、知識として持っているんですね。
しかし、このinfomation(インフォメーション)レベルになると、それがどんどんどんどん怪しくなるんですね。情報というレベルでは、一番簡単なのは、知識の交換がないんですね。
警察と公安調査庁は全くないです。海上保安庁と知識の交換はないです。場合によっては、内閣府、総理大臣ですら各部局が持っている知識を伝達することもなかったと言うことが、かつてありましたね、たくさん。
そういう状態が一部改善されたとは言っても、まだまだその状況は続いているわけですね。
従って、それを更に高度な intelligence(インテリジェンス)のレベル=戦略レベルになると、もうほとんど何も存在しないわけです。
だからこそ、安全保障会議みたいなものを、小池ゆり子さんが一生懸命やられるようになっているわけですが、それだって、今会議をしているだけであって、そこで知識を集め情報を交換し、戦略レベルのことをやっていくという状況にはなっていないようですね。
これは日本の戦後の情報機関の特筆すべき状況だと思っております。
これは、従来から、何ら変わっていない問題点ではないかと思っております。
その背景にですね、これは日本の行政組織の、一般的問題なんですけれども、縦割り組織だとか 縄張り意識だとか、伝令主義だとか、いったような行政組織の典型的な問題がこの背景にあるんですね。
それから、日本の行政組織の中で一番顕著なものは、“民間の排除”です。
民間の知識なり情報などを行政の中に生かすということに、非常に消極的です。全ての官僚組織の中で消化する。官僚組織の中だけで知識を回していく。情報の交換すらも、ままならない。情報の交換そのものもも、官僚組織の中でやる。そう言うことを官僚主義と言うんですけれども。それが非常に強い。
大統領制と内閣制との違いもあると思いますが、アメリカの場合の特徴というのは、何か問題があったらば、すぐに民間の専門家を調査の責任者に当てて、専門的に調査させて、物事を明らかにしていくのそういうことが非常に強い。
北朝鮮の問題に関連すれば、偽札の問題なんか正にそうですね。私今、名前思い出せないんですが、マカオのBDA(バンク・デルタ・アジア)の問題を明らかにしたのは、若いお兄ちゃんです。
それは民間から、突如、そう言う任務を当てられたわけです。そしてその彼は、今そこからはずれているわけですね。そういうふうに、その道、その道に優れた民間の知識人をそういうプロジェクトごとに、行政の内部の戦略・政策レベル作成する中にどんどん取り込んでいって、進めていくという感覚が日本の行政機構の中にほとんどない。
ぜめて審議会とかですね、協議会とかですね、そういったところに、まぁ、いわば格付けに、大学の偉い教授なんかを呼んでですね、そこで懇談会なんかを開いてですね、行政の官僚が作ったプランにお墨付きを付けるといったような意味でそういうものをやっていくというのはたくさんある。そんなのは、インテリジェンスレベルでは、全然関係ないですね。もっともっと民間の様々な知識を行政組織が集めて分析し情報にしてっていき、それを更に戦略レベルで物事をおこしていくと行った発想というのはほとんどないわけであります。
・・・その2に続く・・・
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この講演会のテキスト化及び音声のネット上への公開については、調査会代表の荒木氏の了解を頂いております。
このエントリーのテキストはblue-jewelさんの手によるものです。