[調査会NEWS 671](20.10.7)
■平沼拉致議連会長へ、特定失踪者家族からの手紙(10)田中正道さん(平成5年、千葉県内で失踪)の妹さんである村岡育世さん
※それぞれの失踪状況については調査会のホームページをご覧下さい。
要 望 書
平成20年9月4日
拉致議連会長 平沼 赳夫 様
要望者 特定失踪者田中正道の家族 村岡 育世
私は特定失踪者「田中正道」の妹です。
失踪当時兄は千葉県千葉市曽我町に居住しておりましたが、平成5年6月6日に茨城県の交通安全協会で運転免許の更新時講習を受講したことが確認されたのを最後に行方不明になりました。数日後の6月11日、兄が使用していた自動車が千葉県習志野市内の住宅街近くの路上に鍵を付けたまま放置されているのが発見され、社内には運転免許証、健康保険証、預金通帳(千葉銀行、残額約80万円)、同印鑑、アドレス帳、衣類が残されたままの状態になっていました。
兄は失踪直前の6月2日までは、私の夫の病気を心配して頻繁に連絡してきており特に変わった様子はありませんでした。
私は、兄の行方を捜すべく警察に捜索願を提出するとともに、警察保管の全国の身元不明死体の写真を閲覧するなどして捜しておりますが、今だ発見に至っておりません。
兄の失踪には、
・ 失踪直前まで連絡があり、変わった様子はなく、失踪する理由が見当たらないこと。
・ 平成5年6月6日に免許証の更新をしたが、新しい免許証は未受領のままになっていること。
・ 兄の車は住宅街近くの交通頻繁な道路上に鍵が付けたまま放置されており、貴重品等もそのまま車内に残されていたこと。
等、不審点が数多くあることから、何らかの事件に巻き込まれたことは間違いなく、私としましては、「兄は北朝鮮に拉致された可能性が高いのではないか」と考えております。
福田首相は、拉致事件の早期解決を約束されましたが、先日、首相を辞任することを表明されたことから、拉致事件の解決は後退し、遠のいてしまうのではないかと心配です。
我々、特定失踪者家族は、政府認定の拉致被害者家族と異なり、世間の認知度が低いことから、あまり大声も張り上げられず、積極的に表舞台に立つこともできません。
拉致事件が全面解決すれば、自ずから自分の兄の失踪も北朝鮮による拉致だったのか否かがはっきりします。
一日も早く拉致事件の全面解決がなされるよう強く政府に働きかけていただきますようお願い申し上げるとともに、政府内に拉致事件調査の専門部署を設けていただき、我々特定失踪者家族が何時でも相談に行ける体制づくりも併せて働きかけていただくようお願い申し上げる所存でございます。
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調査会公開分だけでも200名を超える失踪者がいれば、その中には自分の生活圏とリンクする失踪者が一人や二人はいるものと思います。
上記、調査会ニュースに掲載の田中正道さんも、私の身近に感じる失踪者の一人。
彼の失踪地は、まさしく私の実家の自宅近く。
失踪時期の平成5年当時、私は自宅で家族と居住しており、まさに自分の生活のすぐそばで、拉致を疑われる事件が発生していたことになります。
いわゆる大町ルート上に位置する我が家の周辺部では、不審な失踪事件が数多く発生しています。
市原在住で千葉市内で失踪した古川了子さんをはじめ、私にも土地勘のある場所で行方不明になった人のなんと多いことか。
私はたまたま拉致という悲劇に遭遇することもなく、平穏無事に暮らしているけれど、まかり間違えば、私が、あるいは家族や友人の誰かが、被害を受けていたかもしれない。
そして拉致にかかわる実行犯は、私の生活のすぐそばで、何食わぬ顔で普通の市民を装って暮らしているのだと思うと、その底知れない不安感でたまらない気持になります。
私の生活に関わる特定失踪者のもう一人は、昭和57年に新宿区北新宿の自宅アパートから失踪した堺弘美さん。
彼女の失踪地・北新宿は、私が高校を卒業してすぐに和裁の勉強をすべく住み込んだ土地。
失踪年月日の昭和57年4月2日は、北新宿で生活を始めてわずか10日ほど後のこと。
生まれて初めて親元を離れ、慣れない生活を始めたあの場所のすぐ近くで、突然に謎の失踪をし人生を狂わされた被害者がいる・・・ということになります。
その事実を知ったとき、少なからぬ衝撃を感じたことを、私は今も覚えております。
北新宿は、コリアタウンのある大久保地区と隣接する地域です。
JR新宿駅西口から徒歩15分ほどの場所ながら、駅前の賑やかさ・華やかさと打って変わって、一歩裏道を入ると古い木造のアパートが立ち並び、夜になれば街灯の明かりも暗く、少々物騒な雰囲気のある土地でした。
歌舞伎町程ではないにしろ、夜は時々喧嘩騒ぎもあったし、やくざと思しき人が道を行くこともありました。
あの街なら、若い女性の一人や二人消えていなくなってもおかしくない空気はあったかもしれない、と今も思います。
彼らは今どこでどうしているのでしょうか?
特定失踪者のすべてが拉致被害者だとは限らない。
でも、拉致事件が全面解決をしなければ、彼らの失踪が拉致ではないと証明することはできません。
彼らの失踪の真相を明らかにするためにも、拉致事件は一刻も早く解決されなければならないのだと、強く思います。