2008年12月21日

川島高峰氏 北朝鮮テロ全体主義国家の実情を訴える6団体共同集会より

北朝鮮テロ全体主義国家の実情を訴える6団体共同集会 <アジア人権人同学会の設立準備期成会>
08.12.14 明治大学リバティータワーにて

◆開会にあたって
     川島高峰氏 明治大学情報コミュニケーション学部准教授   


みなさんごきげんよう。
本日はお休みの中、お越し頂きまして誠にありがとうございました。
ただ今より、【アジアの人権 拉致・収容所・脱北 収容所問題を考える】北朝鮮テロ全体主義国家の実状を訴える6団体共同集会を開催いたします。

私本日の会の事務局をしております明治大学の情報コミュニケーション学部の川島と申します

僭越ながら、はじめに、私のほうからですね今日こうした催しを開催するに至った経緯、そして「アジア人権人道学会」というのを作ろうではないかといういうことを−−去年の今頃ですが−−六団体の皆さんにお話をしまして、それから1年、今日の日を迎えることができました。

そして、一体何を考えているのかというのを、簡単にお話をさせていただきたいと思います。基本として考えていることは、私はレジメに書ききったと私は思っております。

一つはですね、アジアと申しておりますが、私はここで、21世紀の東アジア、東南アジアを中心にしたアジアということを考えております。

人の移動ををめぐる人権人道問題、これがどんどん、どんどんアジア全域に拡大していく時代になってきました。ボーダレスということが、非常に良い響きをもって語られた時代がありましたが、実際にボーダレスがどんどんどんどん拡大していくと、人の移動に伴う、様々な人権人道問題というものが出てきております。

そうした中で、先進成熟社会に位置する日本が、人権人道について、リーダーシップをとることが必要なのではないかということを考えております。

学会というと、非常に非常大げさな響きだな、と正直思っております。
今日来ていただいている6団体のみなさんは、本当に人権人道を巡って、本当に心を裂き、身を割き、現場で支援の活動をなさっている方ばかりです。

ですから、私自身は、学会というと非常に高遠な理念を目指すように、みなさま想像するかもしれませんが、学会ということで、私が考えたいと思っているのは、学問のあり方を根底から考えなければダメだと言うことを、それを強く思っているからです。

そのきっかけを話させていただきたいと思います。
これは、今から、11年前になりますが、青山で、北朝鮮の人道支援を巡る集会がございました。私も何とかして北朝鮮の飢餓の問題に何か貢献することができないのかと、あの飢餓に苦しむ民衆に何とかして一粒でも米を届けることはできないのか、そういうことに非常に頭を悩ませていた時期がございます。それは94年ですか、その比較的大きなNGO団体による人道援助に関わる勉強会というのがございました。その時のことです。その集会の中である一人の男性が、『人道援助というのはわかるが、あの北朝鮮という国の実状を、皆さんはよくわかっていないのではないか』と言うことを非常に強く訴えました。私は、そういった大きな集会の場で訴えるのに非常に驚きました。その日にその本を手にしたわけです。それが、アンミョンチルの『北朝鮮絶望収容所』という本です。私はそれを読んで驚きました。
という本です。二つのことに驚きました。ひとつは、そこで行われている事に驚いた、二つめは、自分はそれを知らなかったと言うことです。知らなかったと言うことにもの凄く驚いたんですね。

そしてそれがですね、日本の社会科学のあり方とは、どうなんだろうかと。それを知らないで済んできてしまう知識情報の環境とはどういう事なんだろうかと、非常に強く考えるようになりました。その時の訴えた男性は、今日も来ていらっしゃいますが、小川晴久先生です。

そこから、様々な転機がございました。ここに来ている方は、みなさんよくご存知だと思いますが、2002年もの凄く大きな転機だったと思います。拉致を北朝鮮の側が公に認めるということがありました。あともうひとつは、これは非常に大きな出来事です。日本の領事館に脱北者が逃げ込むと。それを中国の官憲当局がブロックすると。そういう非常に衝撃的な事件がございました。

そういう2002年の出来事の中で、いよいよ持って自分は何も知らないんだなと。こういう事が起こらないと、何か事件が起こらないと知ることができないんだなと。
私自身は、アカデミズム、大学、学問という場にいて、そう言った情報を、既存のアカデミズムの中で、残念ながら、十分に知ることができないでいる。
そこに、新しく「アジアの人道と人権を考える学会」、そしてそう言った地域に蓄積されている、人権問題、人道問題、これはですね、実のところは、学実の場ではなく、現場で活動されている、非常に重要な情報が蓄積されているわけです。そうした現場に対して、私は、もっと謙虚に学んでいかなければならないと、知らないわけですから。
ですから、そういうことが、私が、こういう学会を作ってみませんかということを、昨年、六団体のみなさんによびかけたきっかけございます。

さて、そうした中で、私が自信が強く思うところはですね、私も、学者の端くれでございますから、学問の形成とか、理念、学問的真理とは何かとそう言うことを考えたいという『欲求』を持っています。しかし、実はそれが『欲求』なのだということに非常に強く気づかされたわけでございます。

どういうことかと申し上げますと、残念ながら、私たちは、すぐに国家観と歴史観他者と相容れなくなってしまうことがございます。
何でも直ぐに、国家観と歴史観に原因があるのではないかというふうに考えてしまうところがあります。

そして更にですね、何がより正しい歴史観なのか、何がより正しい国家観なのか、そういうことを、過分に競い合ってしまうところがあります。
そういう『知の卓越性をめぐる競い合い』それがですね、それが、ふと、考え直してみるとこういうことに思い当たったのです。
人が幸福であるためには、必ずしも、壮大な国家観や深遠な歴史観は必要ではありません。必ずしも、そう言った物は、必要ではないんですね。
むしろ、そういった、壮大な国家観、深遠な歴史観というようなものが、どれほど多くの人たちの幸福、祈り、絆を踏みにじってきたかことだろうか、このことを痛切に感じる10年でありました。
そして、それを最も痛切に感じたのは、正に冷戦後のアジアなんですね。
冷戦後のアジアでは、まだ冷戦が続いているわけです。その続いてしまっている冷戦、心の中の冷戦が、多くの人権人道問題を作り出してきている。いや、作り出しているだけではない、みえないようなベールになってしまっている。これを何とかしなければならない。これが、私がこの学会を作ろうと考えた、私の気持ち、考えでございます。

つまり、学問を形成するとかそういうことではないです。人道、人権を学問的に形成するということではなくて、まず、アジアの人権人道の現場から、学問のあり方を、根本から考え直さなければならない。そう言う時代に生きているのだということを私は考えて呼びかけをしました。

そうした中でですね、ただ呼びかけるだけではなく、もう少し具体的なことで、四つのことを私はここで提案したいと思います。

四つの学際というものを私は考えております。
やはり学問が、どんどん、どんどんビューロコラタイゼイションされていく、官僚化されてしまう。そういった中で、自分の分野だけ守っていれば良いんだと、自分の分野だけで業績さえあげていれば良いんだと、そうしたことが、こういった問題を作ってきたひとつの原因ではないかと考えています。

ですから学際的にやっていく。その場合に重要な4つの学際。

一つは、東アジア、東南アジアの人権人道をめぐる比較分析を行ってみようということです。
どうしてもこれは、口で言うほど容易なことではございません。

多言語、他宗教です。ですから一つの地域の専門というところにどうしても限界があると思うんですが、そこに踏み込んでいって、比較分析をしていかなければいけないと言うことです。

二番目は、第二の学際、これは、メディアとしての学問、媒体としての学術です。
こういった場をですね、学術という所から設けていくと言うこと、これは、大学やアカデミズムの一つの使命ではないかと思います。私は、この10何年か、多くの人権人道、NGOの方の活動の一端を−−本当に私が見たのは一端に過ぎません−−(見てきました。)
本当に皆さん大変なんですね。時間も、経費も、心も、多くのことが現場のサポートに費やされているわけです。ですから現場のサポートがあって、それを世に理解してもらうためには、レポートが必要ですね。でも、レポートの為には、レコードしなければいけない。
サポート、レコード、レポート、3つのことが必要なんですが、じゃぁ、レコードするというのは、何処が一番できるんだろうか?やはりそれは学術なんじゃないかなと。学術が、レコードの支援をする。そして場を作って、レポートをいろいろな現場の方にしてもらうということですね。学術はやはり、一歩さがる。レポートではなく、一歩さがる、そういった基盤を作っていこう、これがメディアとしての学問、媒体としての学問です。

さて残りふたつの学際。
理念としての学際です。
ひとつは、21世紀の内地雑居、そう言う状況になろうとしている。
日本は18組に一組が国際結婚なんですね。18組に一組ですよ。そして、1700万人 毎年毎年海外に行かれる日本人は1700万人です。日本に入国してくる海外の方は、毎年毎年、700万人以上です。すごい数の出入国が日本では起きているわけです。

私たちの社会は、どちらかというと民族の多様性を(認める意識は)余り低い(高くない)、そういうところで共同体の規範というものを考えてきました。ところが現実はそう言う状況ではなくなってきつつあるんですね。ですから、そういう状況に対して、今までの私たち日本の良いところを踏まえながら、新しい規範を考えていく必要があると考えています。


そして、これを人権問題という観点から考えれば、国際人権が、国内化するということ。
あともうひとつは、国内人権の国際化ということですね。国際人権と国内人権のふたつ、これが今どんどんクロスオーバーしていっているわけです。ですから(このふたつが)かさなりあったところで、私たちが新しい価値=その中で人が幸福になるための新しい価値というものを懸命に考えていく、そのきっかけを考えていく、そのための学際、それがですね、21世紀の内地雑居を考えるということ。
日本で起きていることが、アジアの多くの地域でも、おきているわけです。その起こって言うことを、レコードして、レポートしていく、その経済的な余裕があるのは、日本においてほかないと私は考えております。

そして最後にですね、人権人道のガバナンスという事を考えていかなければ、いけないなと思っております。一般に人間の安全保障という言葉、それから国家の安全保障という概念、この二つは、相対立するものと言うかたちとして使われることが多いと思います。
しかし私はこの二つを、相互補完的に考えざるを得ない状況になっていると思っております。

その限界状況で、様々な問題が起きているわけですね。
ですから、その中での相互補完的な状況=つまり双方にとってよりよいかたちを捜すと言うこと。これは、口で言うのは簡単ですが、現場で考えていくと、もういろんなものがぶつかっているわけです。国家の安全保障と、人間の安全保障というのは、様々なところで、もの凄く多くの争点がぶつかっております。
その争点を、どこかで、誰かがレコードして、そしてレポートして、そのための解決策を、みんなで頭を寄せ合って考えていくことが、絶対に必要なことであると、私は考えております。


今、申し上げました『4つの学際』というのは、私のほうからの提案でございまして、これから多くの方と意見を交えながら、よりよい方向へ行くように考えていきたいと思っております。

こうしたことに至った契機は、そもそも何なんだろうかと。これをもって最後のお話、結びにしたいと思います。そのことを北朝鮮の人権侵害問題なんですね。どうして、北朝鮮の人権侵害問題がアジアの問題へ発展するのか?発展せざるを得ないのか?

それはですね、強制収容所の問題、あるいは、今回集まった6つの団体、これは帰国事業の問題に取り組んでいる団体、脱北者の問題、拉致問題、そして強制収容所の問題、北朝鮮の民主化問題に取り組んでいる団体。こうしたすべての団体が共通して行き着いている、取り組んでいる、関わっていることがあるんです。
それは、あの北の国で何が起きているかを知るためには、脱北者の声、これがすごく重要な情報源なんですね。

何故、脱北と言う問題が起きるのか、脱北と言う問題は、何故脱北者難民になれないのかと言うことですね。そこが周辺国との関わりの問題になるわけです。今日来ている方々は、よくご存知だと思いますが、タイのバンコックに、北朝鮮からの脱北者、これは、1000人以上もいるわけですね。5000キロですよ、5000キロも逃げていくわけです。私たちがバンコックに行こうと思えば、往復でもわずか数万です。往復で10時間か12時間で済んでしまう。その距離を5000キロも越えてですね、何年もかけて、そして最初はたくさんいたのに、その僅かな生き残りの方がたどりついて、それで1000人いるわけですね。

ですから、北朝鮮の人権の問題は、東アジア、東南アジア全体の人権の問題として考えて行かざるを得ないのだということを、この6つの団体の方は、私が気づくよりずっとはやく気づかれていたわけです。

これが、本日、この『北朝鮮全体主義国家の実状を訴える六団体共同集会』、そしてそれを『アジア人権人道学会設立準備期盛会』として実施させていただいた理由でございます。

どうも高いところから僭越ながら失礼いたしました。
ご静聴いただきまして、ありがとうございます。

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※このエントリーのテキストはblue-jewelさんの手によるものです。
※このテキストの音声ファイルはこちらから http://www.netlive.ne.jp/archive/event/081214.html


posted by ぴろん at 09:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 拉致問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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