2006年08月01日

守る会・関東支部学習会(講師:川島高峰先生)に参加して

さる7月29日土曜日、都内で開催された北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会(略称:守る会)主催の関東支部学習会へお誘いを受けて参加をしてきました。
講師は明治大学助教授で近代民衆思想史の専門家で在日の帰還事業についての研究をなさっている川島高峰(たかね)先生でいらっしゃいます。
今回の学習会は、情報公開法に基づき外務省情報公開室を通じて公開を求めた文書を資料とし、在日帰還事業の実態に関しての報告会で、密度の濃い大変貴重なお話でありました。
膨大な資料(しかも殆どの資料に「極秘」の文字がある!)を元にしての貴重なお話を簡潔にまとめるのは私の文章力ではかなり難しいと言うより全く不可能なので、お話を伺っての率直な印象などを私個人の感想として2〜3ご紹介したいと思います。

まず、基本的な事として、日本側はかなり早い段階から(1962年には)北朝鮮の内情をかなり把握していたと言う点です。
ただ、それでもこの帰還事業を止められなかったのは行政側の面子の問題がある、と言う指摘が心に残りました。
公共事業が中々止められないのと同じ事で、帰還事業を続けることそのものに様々な思惑や利権が発生しているというお話はひときわ心に沁みました。
「帰還事業は『人道』の問題である」という金看板がある以上、日赤もそして国際赤十字も面子の問題があって帰還事業その物を止める手立てを行使できない、というお話は性質の悪いブラックジョークとしか思えませんでした。
『人道』と言う美名の下に行政を行使する側にとっては帰還事業は書面上のこと・手続き上のことであっても、現実に帰還するのは生身の人間なんですから。

在韓国大使から外務省への極秘情報として開示された文書(昭和41、42年)でも、すでに豆満江を渡って脱北する人が情報もすでに入手していた事が分かりますし、国内統制のために出身成分の調査が行われている事も把握していることが分かります。
北朝鮮がすでに普通の国でない事は日本政府も重々承知していながら帰還事業を止められず、ずるずるといたずらに帰国者を送り出す構造が維持されてしまったというのは、本当に洒落にも何にもなりません。
その後の帰国者たちが歩んだ悲劇の道を思うと、冷戦の力学の谷間に一体どれだけの人生が突き落とされ、想像を絶する辛酸を舐めたのか?と思うと、彼らの発する叫び・痛みに、私はかけるべき慰めの言葉が見つかりません。

学習会の最後に川島先生が、これらの資料を元に私が本を一冊書くとしたらタイトルは「集団拉致から個別拉致へ」と仰ったのもとても印象深いものがありました。
帰還事業も拉致問題も、根っこは同じ。
北朝鮮の問題を認識していながら帰還事業を止められない構造は、そのまま数多くの拉致事件を見逃す構造につながるものと思います。
冷戦のつばぜり合いの中で、北朝鮮の独裁体制を黙認してきた国際情勢の谷間に落とされた無辜の人たちの人生をいかにして救うのか?
北朝鮮と言う国と対峙する事の重みを、今更ながら改めて深刻に受け止めています。

中国・ソ連・韓国、そしてアメリカ、日本。
冷戦の時代というのは、自国の体制を維持するために敵を必要とした時代、とも言えるのだと思います。
各国の思惑や国益などの利害関係が複雑に絡み合い、その絶妙なまでのつばぜり合いの中で強かに生き延びてきた北朝鮮。
今の北朝鮮がどうしようもない国だと言う事はおそらく誰もが分かっているのに、国と国とのパワーバランスの関係上、その存在を無くせないと考える国が依然として存在する現在。
いったいどうすれば、この北朝鮮と言う北東アジアの鬼っ子のような国から、拉致被害者を取り戻せるのか?
彼の国を普通の国にして、あらゆる人権問題を解決出来ると言うのか?
余りにも問題の山が大きすぎて、正直私は途方にくれてしまいます。

それと話は少し本筋から逸れますが、おそらく現在のこの北東アジアの国家力学というのは、戦前も現在もそんなに大差は無いんじゃないでしょうか?と言う印象を持ちました。
中国があって、ロシアがあって、日本があって・・・太平洋の向こう側にはアメリカが対峙する。
ヨーロッパの冷戦構造は破壊されましたが、北東アジアの冷戦は現在もしぶとく継続中です。
現実のドンパチが無いだけでお互いにらみ合いの戦争状態にあるのは、自明の事。
各国が自国の安全保障を担保するために、朝鮮半島を如何にするのか?
思惑と思惑が交差し、それゆえににっちもさっちも行かない北東アジア情勢。
「朝鮮半島は日本列島の脇腹に突きつけられた短刀のようなものである」と言うのは過去の歴史問題を調べていると必ず出てくる言葉ですが、この論理は戦前も今もそう大差は無いのではないんでしょうかねぇ・・・?

日本の先人たちはこの地域の持つ複雑な難局をいかにして乗り越えようとしたのか?
「歴史の教訓に学ぶ・過去の教訓に学ぶ」と私たちは金科玉条のように言葉にしますが、言葉だけの上滑りではなく、もっともっとリアルに真剣に、日本と北朝鮮だけでなく関係各国を含む北東アジアの情勢を視野に入れて物事を考えるべきではないか?とそんな事も思いました。
右であれ左であれ、この情勢の中拉致被害者を救うあるいは北朝鮮の人権問題を考えるというシビアな現実を前にして、机上の空論ではないもっとリアルな現実的思考を重ねる必要もあるのでは?とも思っています。

いずれにせよ、拉致とは違う観点から北朝鮮の実情を考えてみたいと思って参加した学習会でしたが、考えれば考えるほど拉致を含めた北朝鮮問題と言うのは底なし沼の様相を露呈してくるようで、正直私レベルの人間はどうすれば良いのか分かりません。
それが学習会に参加しての、私の率直な思いです。


posted by ぴろん at 11:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 拉致問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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