まずはこの件について取り上げるにあたり、加藤氏とそのご家族ならびに関係者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。
さて。
私は正直言って、加藤氏の日頃の発言には全く同意をしておりません。
ですが、その事と今回の火事の被害の事は全く別物の話。
日頃の加藤氏の発言を苦々しく思う余り、加藤氏の火事被害について「ざま〜みろ!」的な発言が保守を自認するBlog・サイトに少なくなかった事を、大変残念に感じております。
言論には言論で反論するのが民主主義の根幹です。
その言論の自由を確保する為には、『誰がどのような発言をしようとも、その発言者の生命や財産を脅かさない保障』がなされなくてはなりません。
その保障が担保されなければ、言論の自由を確保する事なんて出来っこないでしょうが?
その意味で、いくら加藤氏の主義主張が気に入らないからと言って、今度のような暴挙は決して許してはいけないはずなのです。
それなのに、今度の暴挙を容認するかのような発言が一部保守派の間から発信された事は非常に残念な事だと思っていますし、愚かを通り越して自ら言論の自由という民主主義の根幹を危険水域に晒している、とも感じています。
売国議員は許せない。
一部保守派の苛立ちや怒りは分かります。
でもその思いが先走る余り、加藤氏の災難を喜ぶなどといった感情的・短絡的行為の先にある危険性について、思いを致す余力も無いのだとしたら、保守派の言論空間はとても危ういレベルであると言わざるを得ないのではありませんかね?
かつて西村眞悟氏が逮捕された時も、思い返せば同じような保守派の危うい言論空間が出現した事がありました。
西村氏の拉致問題に対する功績や人となりに心酔するあまり、一部保守派の中で是々非々の判断力を失い、救出運動の支援の輪に波風を立てた人たちがいたのを、保守派の面々はもうお忘れですか?
拉致被害者救出運動は免罪符ではありません。
西村氏がどんなに拉致問題に関して功績があっても、どんな裏事情があろうとも、犯した罪は罪。
それはそれ、これはこれの分別をしなければいけないのに、西村氏を逮捕するのは救出運動に対する謀略だとか、挙句の果てには西村逮捕に反対しない者に支援者を名乗る資格は無い、などといった極論を振りかざす人まで出没しましたよね?
それでは過激な反日行為を「愛国無罪」だと言って何でも正当化しようとする中国や韓国の事を笑えないと、私はネット上で意見表明をしましたが、その主張は果たしてどこまで過激に走る一部保守派の心に届いたのか?
金英男さん家族の面会劇の時も、理性を失って嫌韓感情に走った一部保守派がいましたが。
彼らの行動を苦々しく思う余り、あるいは横田さんご夫妻への同情心が勝る余りに苛立ちの感情が飛躍して、「だから日韓連帯など無駄なのだ!」といった短絡思考を表明する方がたくさんいらっしゃいましたよね?
あの時も私はともかく冷静に、この面会劇に苛立つあまり日韓連帯をこちらから放棄して、本当に日韓の間に決定的な溝が出来てしまえば北の思う壺になりかねないと主張したのですが。
その真意は果たしてどこまで保守派の面々に通じているんでしょう?
何かと言えばすぐに物事の基本を見失って、カッカカッカと頭に血を上らせる、一部保守派の人たち。
端で見ていて、本当に危ういと言うか思考のレベルが浅いなぁ、と思う事がしきりです。
そんな事で本当に彼らが主張するような、日本の再生などというものが果たして実現などするんでしょうか?
拉致問題などの厳しい現実を突きつけられて、日本人の多くは目覚めつつあると良く言います。
それはその通りだとは思うのですが、しかしその一方で何かと言うとすぐに短絡的思考に走る危うい保守派の言論空間に触れるたび、保守派の言う日本の再生など夢のまた夢、あるいは程遠い先の話と思えてならないんですが?
右であれ左であれ、理性を失って暴挙に及ぶ連中に、そもそも言論の自由を謳歌する権利などありません。
本気で言論の自由を守り民主主義を大事に思うならば、自分の主義主張と同じくらい他者の異論を主張する権利も大事にするべきです。
いくら保守派の私たちが気に入らなくとも、加藤氏には売国的発言をする権利があります。
自分の権利を主張するためには、まず相手の権利も尊重するべきです。
その基本姿勢の無い言論空間は、保守派の面々が馬鹿にして毛嫌いする左のそれと全く同レベルかそれ以下である事を、まずは深く自覚するべきでは無いでしょうか。
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過去参考エントリー
★05.11.27 西村眞悟議員についての見解を・・・
http://piron326.seesaa.net/article/9859964.html
★05.11.30 泣いて馬謖を斬るべし
http://piron326.seesaa.net/article/9988716.html
★06.6.30 敵を見失わない冷静さと強かさを・・・金英男さん親子の再会劇を見て
http://piron326.seesaa.net/article/20038437.html