2007年01月27日

重すぎる言葉

まずは電脳保管録に掲載された蓮池透さんの以下の言葉をお読みになってください。

電脳保管録より  蓮池透さんの言葉(同窓会誌より)
http://nyt.trycomp.com/modules/news/article.php?storyid=5928

年二回発行される柏崎高校の同窓会誌「とっこつ」(2007年1月15日号)に、蓮池透さんの言葉(恐らく講演会のテキスト起こし)が掲載されていました。最近では、蓮池さんの講演の模様もなかなか開かれていませんので、紹介いたします。

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信念持ってる弟
救出へ情報の活用を

蓮池透氏 ミニ講義

 弟薫が帰って4年になりました。この間、同窓生の方々の支援に感謝を申し上げます。帰国当初の激励の言葉、特に堀井真吾さんらの朗読会など、大きな力になりました。
 本人は野球が好きですから、やはり選抜高校野球が励ましになった。初の甲子園出場に、多くの方々と一緒に応援出来たのが良かった。試合に負けても、いい内容でした。
 弟は、昭和53年7月31日、夏休みで1週間柏崎に帰って、拉致されてしまいました。市民プールと市民球場の間、中央海岸の人気のないところで、海岸をどっちに行こうか迷った。北(東の間違い)へ行ったので、拉致された。もし南(西)へ行ってたら、他の人が拉致されたでしょう。
 当時から普通の海岸です。市民には、拉致の危険が身近に起き、本当に怖い(所となった)。成人同士の失踪で、事件性なしと、本気で捜索してくれなかった。横田さんのように、いろいろな遺留品もなかったし。捜査してくれなかった。あれだけの海岸に、市民もいたろうし、情報も得られたはずだのに。福井や鹿児島のように。
 近況を申し上げますと、弟は毎日午前3時に起き、翻訳の仕事をして、昼新潟産業大へ。祐木子は市の保育園に通っています。長女は産業大に行き、当分自分の勉学につきたいと言います。長男は東京で一人暮らし。早稲田大で一生懸命勉強しています。
 弟夫婦は、何としても向かってやろうという気持ちを持っています。着の身着のまま、何の将来保証もないまま、帰国しました。
 二人が、国に対してもっと(損害賠償など)訴えてもいいはず。24年間も無視されてきたのだから---と私たちは考えます。でも、弟はそれを入れない。24年間はもう取り返せない。これから24年を超える期間、国の世話になりたくないと。
 母は、町など歩いていると「国がめんどう見てくれていいですね」と聞こえてきて、やりきれないそうです。風評は大変残念です。国の助けはいらない。自分で子供を育てる。失った24年を超えて育てる。そして、北朝鮮や日本を見返してやる(と思っているのです)。
 これが5年や6年なら「責任を取れ」と言えるけれども、とても、そんな気は起きない。24年という長さに、とても勝てないのです。弟も先日の金正日の会見を見ていました。
 帰国当時「北朝鮮はいい国だ。北はいいところだ。お出でよ」と盛んに言っていました。私は、おかしいと思った。こりゃ、東京にいてはだめだ。何しろ「米帝の協力で、日帝になど」といい、完全に洗脳されていたと思った。
 それが、柏崎へ帰ったとたんに変わった。故郷の力、柏崎の力は非常に大きい。もし帰らなかったら、北へ戻ったと思う。
 今弟と、まだ帰って来ない多くの方との間に、アンバランスが大きい。弟たちの帰国を、心の底から喜ぶことが出来ない。
 それで母は、精神的に不安定になっている。どういう表情で、他人に向いていればいいのか困ってしまいます。喜んでいいのか。ブスっとしていれば、またいろいろ言われる。一時期、私もふさぎこんだ。自分たちは帰ってきたけれど、帰ってこれない人の事を考えると、心から喜べないのです。
 これは、弟が一番考えていること、信念なのです。自分たちの持つ情報を、救出に使ってほしいと思っている。ただ公表すると、北朝鮮へ直ちに伝わり、対抗策や予防策を張られ、情報が何の価値もなくなると、考えています。
 金正日の情報も、全てでなくても、良く知っていることはある。国や、まだ帰られない方の家族には、言っていることもあります。ただ公表すると、その人たちに危害が及ぶ恐れもある。自分たちと北と対局することになるし、情報の価値がゼロになってしまうかも。
 自分たちの情報をもとに、早く国なりが補足して、まだ帰って来ない人を取り戻してほしい。表向きには、しゃべらない。そういう環境におかれています。
 金正日との会見、韓国の人の面会についても、国や横田さんに情報を提供している(のが訳だっているはず)。時間がたてばたつほど、帰らない方との間の格差が広がって、非常につらい。何とか早く、こういうことがなくなるように、ご支援をよろしくお願いします。

柏崎高校同窓会開放「とっこつ」2007年1月15日


一読して、私には返す言葉がありませんでした。
透さんのこのコメントは、読んでいて余りにも重いです。
中でも、

>国の助けはいらない。自分で子供を育てる。失った24年を超えて育てる。そして、北朝鮮や日本を見返してやる(と思っているのです)。

という一言は、私には余りにも重過ぎる。
薫さんは北朝鮮だけでなく、日本と言う国をも見返してやると思っている、と言う。
この言葉に、私たちは一体どう答えたら良いのでしょうか?
見返してやる、という彼の決意が私の心に突き刺さって離れません。
薫さんのこの強い思いに対し、私は心底返す言葉がありません。
日本と言う国は、帰国した被害者たちにとって、心底安住の地であると言えるのか?
思わず考え込んでしまいました。

20年30年と言う長い年月、日本と言う国と日本国民は拉致被害者の存在を見逃してきました。
この気の遠くなるような長い年月、見逃されてきた被害者は一体どんな思いで、祖国日本を見つめていたのか?
強い望郷の念に駆られ、家族や友人を恋焦がれる一方で、一向に日本からの救いの手が及ばない現実に、どれだけ深い絶望の日々を過ごしたのか?

祖国日本を恋焦がれる気持ちが強い分だけ、いつまで経っても助けてくれない祖国日本を彼らはどれほど恨んだことか?
24年の月日を経て、5人の被害者は無事帰国を果たしました。
でも、透さんのコメントにあるように、失われた年月は余りにも長く苦しくて、取り戻しようがないのです。
余りにも長すぎる年月、被害者と家族が味わった苦しみは、どんなにしても埋め合わせる事は出来ない。
その現実を、私たち支援者はいったいどこまで理解しようと努めているのか?
そのあたりの理解力が、どうも怪しい人たちも少なくないように感じるのは私だけなのでしょうか?

先日の透さんと山拓との面会騒動の一件でもそうでしたが、どうも支援者の中には透さんをはじめ蓮池家に対して、あまり良くない感情をお持ちの方が多いようです。
蓮池家に対しては、何かと言えば風当たりが強くなる傾向があるようですが、その事を私はとても悲しく思います。
何度も言うように、蓮池家の人たちは家族も含めて被害者なのです。
無事に家族と子供たちを取り戻したとは言え、彼らの心の傷はどんなに手を尽くしても癒すことの出来ない、余りにも深すぎる傷なのです。

その事を思えば、仮に透さんや薫さんが多少のうっかりをしたからといって、一体どこの誰が、彼らのうっかりを罵倒する権利があるというのでしょう?
少し冷静に我が身を振り返って考えてみてください。
余りにも余りにも余りにも長すぎる年月、彼らの苦しみを見逃し続けた私たちに、彼らの言動のあれこれをいちいち批判する権利などあるんでしょうか?

拉致被害者もその家族も、ごくごく普通の人間なのです。
そして一般の私たちには及びもつかないほどの苦しみを味わってきた人たちなのです。
その彼らに、これ以上の精神的・肉体的負担を求めてはいけない。
押し付けてもいけない、と私は思う。

家族は神様ではないのです。
必要以上に家族を神格化して奉りたがる人もいるようですが、そんな事は家族にとって一番の迷惑では無いでしょうか?
以前から、何度も主張しているように家族の疲労は限界値をとっくに超えているのです。
拉致問題の支援者を自認するならば、これ以上家族に余計な負担をかけないように配慮するのが、支援者としての最低限の心得では無いか?と常々思っています。

北朝鮮にはまだまだたくさんの被害者がいます。
被害者の帰りを待つ家族もたくさんいます。
たくさんの被害者とたくさんの家族がいれば、その中には本当にいろいろな人たちがいることでしょう。
様々な事情を抱え表に出たくても出られない人もいるでしょう。
そして一番重要な事は、彼ら被害者とその家族のすべてが、横田夫妻のような高潔な人格者ではない、ということなのです。

家族や被害者がどんな人柄であろうと、どんな事情を抱えている人であろうと、支援者である私たちが彼らを選り好みすることは許されない。
すべての被害者を救うという事は、被害者や家族を選り好みしてはいけない、という事でもあるはずです。

蓮池家に対する風当たりの強さを見るたびに、拉致被害者とその家族にとって、日本は本当に安住の地なのか?と思ってしまいます。
私たちの側に、被害者とその家族を懐深く許容する器量がなければ、真の意味での被害者救出など遠く及ばないと思います。
被害者救出と言うのは、物理的に被害者の肉体を北朝鮮から日本に連れ戻せばいいと言うものではない。
傷ついた被害者と家族の心を暖かく包み、失った日々は取り戻せないにしても、せめて残りの人生を心穏やかに暮らせるように配慮して、初めて救出をなしえたといえるのでは無いでしょうか?


posted by ぴろん at 10:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 拉致問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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