2007年07月01日

桜花特攻隊員練成の地、神ノ池基地跡へ行く

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昨日、私は母を連れて茨城県鹿嶋市にある、桜花特攻部隊の訓練基地でもあった神ノ池基地跡を訪ねて参りました。
過去のエントリーでも紹介したように、昭和19年10月、海軍は特攻のための専門部隊「七二一海軍航空隊」通称「神雷部隊」を結成し、翌11月より現茨城県鹿嶋市にあった神ノ池基地で訓練を行う事となりました。
千葉と茨城はお隣の県にも関わらず、交通手段の不便さなどを考えると今までは行きたくても躊躇する日々であったのですが、特攻の大叔父が自分の命をかけて護った当時7歳の姪っこである私の母も今年69歳。
こんな事を書くと縁起でもありませんが、いつ何時何が起こっても不思議ではなくなりつつある歳となっております。
母が元気で足腰立つうちに、思い立ったが吉日とばかりに、叔父の気配の残る土地を片っ端から訪ねてようとしている私たち母子なのですね。

神ノ池基地跡は、現在住友金属鹿島製鉄所の私有地。
しかし神ノ池基地の歴史的経緯に配慮し、敷地の一部を公園として一般に開放し、そこには慰霊碑と桜花のレプリカが展示された、掩体壕(えんたいごう)が無料で見学できるようになっています。

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ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、神ノ池基地における桜花の投下訓練はたったの一回。
それであらゆる攻撃に対応できる「練度A」判定を貰い、彼らは鹿児島県の鹿屋基地へと進出していきました。
叔父の足跡を訪ねるたびに思うこと。
人一人の命を爆弾に乗せて特攻させるという作戦自体も無謀だけれど、その為の訓練もたったの一回こっきりだったという事実を前に、所詮は今の感覚でしか物を考えられない戦後生まれの私には、「余りにも無謀で過酷な状況」の一言しか思い浮かびません。

しかし国家存亡の危機に際し、彼ら特攻志願者は己の命を捨てても国を家族を護りたいと、心底切実に願ったのでありましょう。
それなくして自ら命を散らす特攻作戦などに参加できるものなのかどうか?
特攻は犬死と仰る方もいますけれど、しかし今自分の命を捨てる事が、特攻に臨む事が、自分の愛する家族を護るためにどれ程役に立つか?を分かっていたからこそ、つまり自分の命の価値を知っていたからこそ特攻隊員は誇りを持って出撃に臨んだような気もしています。
でなければ、普通に考えてとても正気の沙汰とは思えない特攻作戦にその身を投じることなど出来るのか?
5月4日の第7次桜花出撃に際し、特攻の大叔父は笑顔で母機の一式陸攻の搭乗員に別れを告げて桜花に乗り込んだと、母機の搭乗員であり桜花の発射ボタンを操作し、戦後を生き抜いた戦友のA氏の手記にもありました。

しかし如何に戦中の過酷な状況にあるとはいえ、人一人が特攻に臨むに当たって笑顔で出撃していくというその境地に至るまでは、人知れず涙を流し恐怖心に駆られ心の揺れる瞬間を何度も通過したに違いないと考えます。
その恐怖心を乗り越えさせたものは何なのか?
それはやはりどう考えても、家族への愛に他ならぬと思う。
それなくして、どうして十死十生の100%の決死の特攻に、そんなに簡単に人は臨めるものなのか?と思っています。

神ノ池基地跡地に立つ桜花の慰霊碑を前に、「叔父さん、やっと逢いに来たよ」と言って私の母は号泣いたしました。
慰霊碑に花と線香を供え、周囲の雑草を抜きゴミを拾い、叔父の魂をしばし慰めました。
特攻作戦は死んで逝く者にも護られて生き残る者にも、過酷なまでの試練を与える。
その心の痛みと共に母の人生はありました。
立派な叔父さんの志に泥を塗ることの無いようにと、叔父さんの心を受け継いで生きる事が、母のその後の人生を支える大きな柱の一つとなりました。

神ノ池基地跡の頭の上に広がる空、そして公園を渡る風。
この地には、当時わずか19歳の青年が、かつて自らの命を真剣に桜花の投下訓練にかけた時間が確かにありました。
街の姿は現在大きく変わってしまっても、叔父がこの地で短い生涯の一部分を過ごしたことに変わりは無い。
もしや叔父の匂いが多少なりとも残ってやしないか?と、母と二人大きく深呼吸などしてみました。
叔父が歩いたかもしれない公園の地を踏みしめ、叔父の気配を追い求めもしました。

特攻の大叔父さん。
どう逆立ちしても私はあなたの壮絶な決意の足元にも及びません。
あなたの命がけの愛に護られ今命をつなぐ者の一人として、精一杯の生を全うしたいと思います。
いつか三途の川を渡ってあなたに逢う時、恥ずかしくない自分でありたいと思う。
そんな事を改めて感じた、神ノ池基地跡を尋ねる母と私の小さな旅でありました。


posted by ぴろん at 08:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 特攻の叔父の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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